暇をもてあます自分をもてあましてしまうくらい暇だから表に出たら宿主がリビングの床にうつぶせに転がっていてなんか不気味だった。
空気もこころなしか暑苦しいうえによどんでいて正直きつい。
エアコンくらいつけろエアコン。先進国民。
「おはようバクラ」
「・・・なにやってんのお前」
「死んだふりごっこ」
いや、突っ伏したまま答えられても困る。
「・・・・とうとうセルフでスプラッタプレイか?」
「テーマは昼夜を問わない執拗な幽霊の攻撃に耐えられず苦しみもがくかと思いきや最後は安らかに天に召された美少年だよ」
「自分で美少年とかいうな」
「やだなぁバクラったら想像の世界では皆が皆輝ける主人公じゃないか」
「おまえの場合素だろ」
「ちなみに幽霊役はねー」
「どうせオレ様」
「そう、執拗で変態な幽霊はお前だよ、自覚あったんだね」
いや、突っ伏したまま笑われても困る。しかもやっぱりこの部屋あつすぎる。
「宿主」
「なに、幽霊」
「そのプレイはいつまで続くんだ」
「まがまがしき幽霊が去るまでかなぁ」
「エンドレスじゃねえか」
「ほらお前も感じるだろう、幽霊はまだそこにいるんだこの蒸すような熱気と邪気はそいつのものだああなんて凄い温度と湿度だろう」
「むしろオレが対応に困る、つーかエアコンつけろよ」
「エアコン?そんなアイテムはとっくに破壊されてしまった」
「・・・・・・・・壊れたのか」
「『あの瞬間から世界は変わった』」
「ナレーションをつけるな」
「『勇者バクラは愛しいもののためにエアコンを直すことを心に誓い村を後にした』」
「幽霊じゃなかったのかよ」
「ちなみに回復の呪文は電話おいてる棚の一番上の引き出しに入ってるよ」
・・・・・・一番上の引き出し。あった。
「・・・オレ様にはなんとかデンキって書いてあるように見えるんだが」
「『バクラは究極魔法を手に入れた!』」
「電話番号に見えるんだが」
「『さあさっそく唱えるんだ!バクラ!世界を救うために!』」
07 21