うつくしさをのぞけばなにものこらない女だった。
母さんは兄のことが、というより自分も含めた我が子二人がどうやら気に食わないらしい。
父さんがこども二人を可愛がることをひどく嫌がり心底恐れているようだった。
父さんが二人ぶんの頭を撫でてくれていると
母さんが痛いくらいに手を握りこんでくる。
痛いくらい、ではないか。痛い。
彼女はすぐに爪を立てるからこちらとしても好きにはなれない。
彼女の瞳はうつくしいばかりでただの飾りに過ぎなかった。
ビー玉よりも役に立たず水晶よりは濁っている、
安物の女の目が彼女の一番の誇りだった。
母に聞いてみたことがある。どうして二人も生んだのかと。だって父さんがどうしてもこどもが欲しいと言ったから。
父に聞いてみたことがある。どうして母を選んだのかと。だって母さんが一番きれいだったから。
兄に聞いてみたことがある。
父さんと自分と母さんと、どれが一番愛せるかと。
父さんとお前のことはいまさら言うまでもないだろう。だけど母さんは、母さんはこちらをどう思ってくれているのか、わからない。
でもいいじゃないかこっちは二人なんだから。
ならばそれでいいと思った。
父は変わらず抱き締めてくれる。
兄は相変らず同じ顔をして生きている。
母さんあなたが生んだ悪魔二匹はあなたより遙かに美しくなります。