今年のそれは冬に届いた。
受け取ったばかりの葉書きを手にしてじっと見つめる。
去年の秋に届いたものには、唐突ですが結婚しましたとかいてあった。僕ほどではありませんが綺麗な女性ですとまるで人事のように。
唐突すぎた。
さらに急なことに、いや自然な流れなのか、今年はめでたく子どもができたと丁寧な字が語っている。
思わず取り落としそうになって慌てて掴むが、
幾度丁寧に文面を読み返したところで中身は変わらないようだった。

獏良君は高校を卒業してあのマンションから引越した。
これがねえ次の家なんだけど、この街からは離れちゃうね、でも大学からは近いんだ、と楽しそうに資料を学校の机に広げていたのを覚えている。次の引越し先は僕もみんなも知っていて、その次の転居先は何故か僕だけに知らされて、そのまた次は何故か海馬くんに知らされて、(最終的に僕も知った、仕事上そのほうが早いと思ったのか?)、その次から今までどこにいるかは僕も知らない。それでもどうやら生きているとわかるのは住所無記入の葉書きが僕の元に来るからだった。
どれもなにか特別なことが書いてあるわけでもない。近況報告と、他愛のないことと。罪の告白だとか懺悔だとか脅迫だとか、突拍子もないことが書いてあったことは一度もない。にも関わらず、年に一度のスローペースではあったが確実に届くそれに、僕は彼の、というより彼の影の執着の残骸を見ているような、そんなささやかな違和感を覚えることがたまにある。

ぺらりと指先で弄びながら、もう一度だけ件の葉書きを読み返す。
写真つき、普通のものよりは厚みのある。獏良君はこどもと一緒にそのなかで微笑んでいる。はあ、と僕が息を吐くと写真と彼の笑顔が曇っていった。ぼやける。そこを指でなぞれば再びはっきりと現れる。あたりまえのことだった。
(ひさしぶりです。実はこどもができました。そっくりでなんだか笑えてしまいます。)
彼は同じ顔でそこにいた。
彼とその子と、
その子と?





(違うよね)







やはりそっくりになったのか。
笑えるくらいにそっくりに。
一方的に送信される、彼が僕によこす恐らくは僕宛てでない手紙の本当の宛先、
確認する術などない。彼は住所を書かないから。
しかし僕がそうなったようにきみもそうやって同じ顔をして、





(それからどうするつもりなのかな)









































□いやあ、でも結婚なんてしないのかな。